二度も 『間に合って良かった』

14. 二度も 『間に合って良かった』

顔を出したとたん 『ああ良かった、間に合って良かった』と そのお宅の奥さんが声を掛けてきました。『話の合う、大好きないい人がいるので遊びに来ませんかと電話を掛けて お呼びしようかと話をしていたんですが 忙しいから呼び出しても迷惑だからと話になり 声を掛けなかったのですよ』 と 先客に私を何とか引き合わせて話の機会をと思っていたその人が 帰ろうと腰を上げた所だったのです。

夕方 自宅に帰るにはまだ時間が早いので ちょろっとこけ(ちょっと)寄り道をして 本格的に農業をやっていますと言うぐらいの友人でバンダナが似合うMお兄さんのお店に顔を出して 「日暮れのばかっ茶」でも 頂いて帰ろうかと立ち寄ったのでした。そこには顔なじみのKさんが和やかな顔をして座っていました。御歳74歳で苦学苦労を重ねて人となり 町議会議員を何期も務め また仕事でも大きな設備会社に育て今では息子さんに道は譲られたものの 農業は若い者には負けずと頑張って現役で働いている人なのです。

『お疲れです(夕方の挨拶言葉)、暫くでした。お元気でしたか どうですか』『ああ お疲れ、はあるかぶりだない(久し振りだね)あんたも元気だない。』『相変わらずお元気ですね、今どうですか 何やってますか』『今のところ 毎日炭を焼いて過ごしているがない、炭をまた沢山使うからない』Kさんも私達と同じように近代農業に疑問を持って 新しい考え方の農業にもっと以前から取り組んでいる人で それを含めて博識はすごいものです。

農業の話をしている最中、あることを思い出しました、それは以前手に入れた餅をつく杵のことです。その杵は普通の杵はと違い太く、短く、臼に当たる頭の先の部分が平らで直角ではなく 斜めに当たる使われ方の角度になっていたのでした。私の家の年の両親も76歳になりますが どうしてそんな角度になっているのか、何に使われたのか全く見当もつかないのです。大きく振り上げるには 6Kgもの重さがあり(普通は4Kg)、重くて お餅をつくような とてもそんな仕事は出来ないしせいぜい10-15cm持ち上げて使うしか考えられないのです。当然餅でもないし 雑穀でもない、なんなのか。

身振り手振りでその杵の説明をして『どうですか、何に使ったのか判りますか』と尋ね、暫くはその場の全員でなんなのかなと話し合っていたのですが、『ああそうだそうだ、それは「しめかす」を搗くときに使った杵だよ』と頷きながらその杵の使った説明や思い出を Kさんが話して呉れました。

『昭和の始め頃まで 確か自分の10才頃迄だったと思うけど「しめかす」と云ってあんたがた知らねえだろうが ニシンの干した物が肥料としてそれがカマスに入って売られていてニシンの形が残っているので肥料にするには=細かく砕かなければ撒けないので その為にその形状の杵が使われていて 「しめかす」を搗いていた、親が使っていたのを覚えているなあ』と。

奥さんが『よかったねえ 為になる云い話を聞けて。本当に Kさんは物知りだから』『そうだな、帰るのに間に合ったし こんな話が出来たから 昔の道具の使い方が知らないままにならずに 伝えておくのが 間に合って良かった。』 続けて Kさんは『おい、またこうや(おいで)、いっぺえ話さず(沢山話しましょう)』

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