27 ピカピカの 「ヘッツイ(かまど)」

知り合いの建築板金を仕事としている会社の玄関先に 「ピカピカ」している物が置いてあり これに引きずられ込むように 思わずそこに入り込んで見入ってしまいました。 『やっぱりな!!』 それは見事な仕事がしてある「銅壺」が乗ったオール銅製の「へっつい」でした。



一般的な「へっつい」は別名「かまど」と呼ばれており 唯単に火を焚いてこの上で煮炊きが出来るだけの物が多いようです。「かまど」は普通は下の部分が 煉瓦を積み上げてその場所に「かまど」として固定されていて その上にお釜を乗せて煮炊きをするのです。 これが進歩して下で焚いた火の余熱を有効活用しようと 上部に「湯沸かし」が出来る様に 湯を沸かす容器を持った物があり この部分を「銅壺」と呼んでいます。勿論「銅壺」の部分は銅で出来ている訳ですが 当然乗せるにはお金が掛かるものですから一般的にはそう多くは普及しているわけでは有りません。

しかしこのお宅にあるこれは移動が出来る様に脚の部分まで「銅壺」と一体となった銅で出来ており その「銅壺」の外形の丸くなった角の部分も 湯を沸かす容器の曲線部分も 大きな傷や凹みも無く 鮮やかな飾り鋲が綺麗に整然と打たれていて とても立派なものです。

奥さんの実家がこの「銅壺」屋さんで 物置に仕舞われていた物を兄に話しをして頂いてきたのだそうです。昔、小さい頃 亡くなった母に『綺麗にしろよ』と云われて磨き上げ 『煮炊きをしたのを良く覚えていますよ』と話して呉れました。上に載っている銅製の「やかん」は夫の亡くなった父が「板金屋」として仕事をしていた折り作った「やかん」で これも大事に仕舞って置いた物をここに飾ろうと言う事で出してきたのだそうです。

建築板金の仕事が余りにも暇なために 社員8人が2日掛かりで綺麗に磨き上げ、ここに置いておくことが 自分たちの仕事の出発点で丁度良いと話し合って据えたのだそうです。良い話しでした。